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豪腕真黒男べー

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「術競べ」(六)  作 幸田露伴
抜麿「これお狐、心理生理の二面に渡って哲学宗教の秘密に触るる神秘深奥の学問の為にナ、貴様の身体を暫時実験に用いるからその積もりでいろよお狐。」

お狐「アノ何でございまするか解りませんが、どうか御免下さいまして!」

抜麿「解らんなコレ、怖い事では無い、学問の為である。」

お狐「でも私をどうかなさりまするので?」

抜麿「いやどうも致すのでは無い、もちっと予に近う寄って、ただおとなしくしておればよいのじゃ。予が呪文を唱え手先を動かすのを黙って見聞きしておるとナ、そのうちに好い心持ちになってウトウトと眠くなる。そうしたら一向に構わずに寝てしまえばそれでいいのだ。」

お狐「嫌でございまするネェ、正体が無くなるのでございますか。」

抜麿「左様さ、正体が無くなるというのでも無いがまず眠くなるナ。」

お狐「お上の前で居眠りを致してご覧に入れるのはあんまりお恥ずかしいことで、こりゃ私はどうぞ御免なすって下さいまし。」

抜麿「イヤ苦しゅう無い、イビキをかいてもヨダレを垂らしても許して遣わすから。」

お狐「いくらお許し下さいますにしても、これだけは御免下さいまし、女のたしなみに背くことでございますから。」

抜麿「大事無い、誰も見てはおらぬし、予ばかりのことである。そんなに片意地になって女のたしなみを兎角申さずとも予の言いつけに従うがよい。」

お狐「いくら仰いましてもお恥ずかしゅうございますから。」

抜麿「困るナ、そう強情では。‥‥ムム、よしよし、最初一度だけの事である、後はまたどうにでもなることであろうから、騙すに手無しである、利をもって誘ってやろう。コレお狐、その方何か欲しいものは無いか。」

お狐「欲しいものと申しますと?」

抜麿「衣服(きもの)とか髪飾りとか、何かそのようなもので。」

お狐「私は嘘偽りは申しません、正直に申しますが、そりゃあ欲しいものは沢山ございます。」

抜麿「まず差し当たりは何であるナお狐。」

お狐「お召縮緬(めし)が欲しくって欲しくってたまりませんのでございます。」

抜麿「お召しは何ほどぐらいいたすものである?」

お狐「品次第でございますけれども、十四五円ならよろしゅうございますネ。」

抜麿「高いナ。も少し手軽なもので欲しいものは無いか。」

お狐「左様でございますネェ、節繊維(ふしいと)で十円、伊勢崎(いせざき)で八円、秩父銘仙(ちちぶめいせん)でも見好いのは五円位も取られます。」

抜麿「よくいろいろと知っておるナ。では仕方が無いその秩父銘仙と言うのを買って遣わす。どうだ嬉しいか。」

お狐「あの私に買って下さいまするので?」

抜麿「そうだ。」

お狐「そりゃあどうも誠にありがとうございまするが。」

抜麿「その代わりこの方の用も足すかどうだ。」

お狐「ハイ、‥‥アノ‥‥何でございますか‥‥それは、」

抜麿「嫌なら買っても遣らぬがいよいよ嫌か。」

お狐「ハイ。イイエ。イイエ。ハイ。‥‥」

抜麿「どうだどうだ、分からんことを申さずとも自分の好みの物を買って、主人の用事も勤めたのが当世であろう。それ五円遣わす。受け取るがよい。」

お狐「それ程までに仰ることならばご試験の為に、どの様にも私の身体をお使い下さいまし。これは頂くに及びませんでございます。」

抜麿「ン、予の熱心に感じたところは感心な奴だ。これは一旦遣ったものであるから袂(ここ)へ入れて置いてやる、サアサア予が引っ張る通り前に出て、前に出て!そう!まずそこでよし。さあ術を掛けるぞ、気を静かにして!」

お狐「何だか寒いような怖いような心持ちが致しまして。」

抜麿「怖いことはちっとも無い、安心しておれ、予の指を見ておれ、動く通りに。」

お狐「オヤオヤ砂の上へ『へのへのもへじ』を書くような指(て)つきをして、人の目の前で何かなさるのネ。」

抜麿「黙っておらんではいかん。法事であるから、真面目になっておれ。直にもう眠くなる。予が唱える呪文を気を鎮めて聞いておれ。ウルマノヲトコハイモクテネー、コクリノヲトコハババスーテネー、トラネルソウネルワッパネルー、トンネルバンネルフランネルー、オーライ、ウトーリ、ヒナタネコー。そーれ眠くなって来た。どうだ瞼が下がるだろう。オーライ、ウトーリ、ヒナタネコー、オーライ、ウトーリ、ヒナタネコー。や、とうとう寝てしまった!実に奇妙であるぞ!あぁ実に妙だ、我ながら妙だ!実に感心だ、実に不可思議だ、実に人間の最霊最妙の現象だ!

アァ朽藁抜麿(くちわらのぬけまろ)、弘法伝数の徒と相距る幾ばくぞやだ!どれどれ術家のいわゆるパッスを行って遣わそう。‥‥。さてまずこれで好し、これから試験をして見よう。これお狐、どうだ時候も大分暖かになったナ。」

お狐「ハイ、左様でございます、暖かでございます。」

抜麿「フフフ、この寒いのに暖かだと言っておる。これはおもしろい。どうだお狐、こういう陽気になるとシラミが這い出すと申すが、貴様なぞも定めしたかられておることであろう。ヤ、この襟元にコレ胡麻粒程の立派な奴が一匹這っておるでは無いか。」

お狐「まあ、お嫌だこと!お恥ずかしゅうございます!」

抜麿「フフフ、綿ゴミを指して申したに本当のシラミかと思って、真っ赤な顔をして恥ずかしがっておる。こりゃあ面白い!これ、襟にさえこの通り這っておるようでは、背中にも定めし沢山いようぞ。痒かろう痒かろうどうだお狐。ヤ、顔をしかめて痒がり出した。奇妙奇妙!こりゃ可笑しい。お狐、予が呪文をもってそのシラミをことごとく退散致させて遣わす。マーゴノテバアリバリ、マーゴノテバアリバリ。どうだ治ったろう、もう痒くはあるまい。」

お狐「ありがとうございます、痒くはございません。」

抜麿「フフフ、どの位性が抜けて馬鹿になるものであろう!おりもせぬシラミがいて痒いと言ったり、マーゴノテバアリバリと言えば痒くなくなったと言ったり、アッハハハハ、ほんとに馬鹿だナァ、アハハハハハハ。可笑しいナァお狐、可笑しいだろうお狐、ハハハハハハ。」

お狐「オホホホホホホ」

抜麿「ヤ、こりゃあ馬鹿だ、訳も分からないのに可笑しそうに笑って、しかも自分の事を笑われているのも知らんで笑うというのは、何処までナンセンスになったものか数が知れないわ。アハハハハハハ。」

お狐「オホホホホホホ、オホホッ、オホホッ。」

抜麿「真に可笑しそうに笑っておるところが実に絶妙だ。さも予が馬鹿馬鹿しいことをしておるのでも見て可笑しくって堪らないように笑いおるのが可笑しい。ハハハハハ。」

お狐「ホホホホホホホ。」

抜麿「フフフフフ、まだ笑っておる!、もう止させてやろう。お狐!考えて見れば可笑しいことは何にも無かったナ。人間というものは一体馬鹿で何にも知らんで笑ったりなんぞしておるが、気がついて見れば自分の馬鹿なのはつくづく悲しいナァ。俺は何だか悲しくなったが貴様も悲しいだろう。ナァお互いに馬鹿なのが悲しいナァ。」

お狐「なるほど私も悲しゅうございますネェ、な、な、情け無くって!」

抜麿「ヤ、すすり泣きまでして悲しみだした。フフフフフ。予も貴様の馬鹿なのが不憫で悲しいが、貴様も予の馬鹿なのが不憫で悲しいか、エーンエーン。と泣き真似をして見せたものだ。」

お狐「私もエーンエーン、若様のお馬鹿なのが、エーンエーン、お可哀想で、エーンエーン、悲しくってなりません、エーンエーン。」

抜麿「ハハハハハハ、大笑いだ。自分の事は棚に上げておいていい事を言いおる!大層な泣き声だぞ、羊でも鳴くようだ。そう泣かすばかりでも可笑しく無い、陽気にして遣わそう。お狐!、しかし泣いてばかりいてもつまらん世の中だ、ちと浮かれるのもよい、酒は憂いを払うものだ、一杯遣わそう、これを飲むとたちまち酔っていい心持ちになるぞ。それそれどうだ、身に染み渡るだろう。正宗だぞ。酔いが発して来たろう、どうだお狐。」

お狐「アァ顔が火照って眼がちらちらして好い心持ちになりました。」

抜麿「ハハハ。湯を飲ませたのに酒だと思って顔も赤くして全く酔ったような心持ちでいると見える。不思議不思議。どうだお狐、好い心持ちなら歌でも歌わんか。それ隣室(となり)で三線の音がする!貴様の歌うのを待っている様子だ。歌え歌え。」

お狐「どどいつの三味線ですネェ。面白くなってまいりました。じゃあ一ッ聞きおぼえを遣りますよ。お前もーどじーなら私もどじーで、どじーとどじとーで抜けー裏だ。」

抜麿「聞こえもせぬ三線に浮かれて歌い出したのが面白い。こりゃあ妙だ、実に妙だ、珍妙だ。も一ッ歌え、も一ッ歌え。貴様の歌は面白い。」

お狐「お前もー馬鹿なら私も馬鹿で、馬鹿ーにしあうもー馬鹿馬鹿し。」

抜麿「ン、ナァル程、摂理を含んでいる歌だナ。面白い。も一ッ歌え、も一ッ歌え。」

お狐「サイコロ(さい)のー一(ピン)の所(とこ)は、狸ーのお尻、それーが、知れなきゃあ、舐めーて見な。」

抜麿「ハハハハハハハ、何だかどうもらつな歌で理由(わけ)が分からんナ。しかしもうこの種の実験はこれで済ますとして、これから大切の天眼通の実験をしなければならん。これお狐、貴様は北利奇之助を見た事が有ろう、――年賀に来たから。あの男の宅は直近所だが、あれのところへ参ってあれが何をしておるか見て帰って来い。こらこら立って行かずともよい、ここにいろ。」

お狐「ヘェー。」

抜麿「貴様は今既に通力を得ておるのだ。目を塞いでいて天下の事が分かるのだ。さあ北利の家へ行って何をしておるか見て来て話して聞かすがよい。」

お狐「こうも馬鹿げきった事が言えば言われるものかネー!どうも変な事を言うと思ったら私に命令(いいつ)けてるなあ、つまり身体はここへ置いて魂だけで北利の家へ行って来いというのだよ。ひど!馬鹿馬鹿しい、鼻の穴から煙草の煙でも出しゃあしまいし、そうお手軽に魂が体から抜けて出てたまる分けのものじゃあ有りゃしない。やしゃごのお化けだってあの殻の中から出っきりにゃあならないものを、豚の何かの風船に五色の糸でもつけて飛ばすように、魂が尾を引いてふらふらと身体の外へぶらつき出しでもしたら御慰みだろうが、そうしたら生憎風でもって吹きつけられてその尻尾が電線に絡まってしまって、魂の立ち往生ッていうようなとんちきなことも始まりそうな話だ。仕方が無いからこうやって色々の事を思いながら薄目を開いてボンヤリとした顔をして黙って座っていると、今私の魂が北利の家へでも行ってる最中かと思って妙な顔をして私を見つめているこの抜麿さんのお顔ッたら無いネ!。オヤオヤこの人も眼が二つあるよ!。マァ感心に鼻が下を向いて付いている中が可愛らしいじゃ無いか、そして眉毛が眼の下に付いてもいないのネー、ホホホこれでもやっぱり並みの人の形をしていらしゃるからいい。魂が見えないものだからいいようなものの、手に取って検めることの出来るものなんだろうもんなら、この抜麿様のお魂なんぞはきっと州が立っていらっしゃるよ!。どれどれ、もう帰った積もりにしてもいい時分だろう。いい加減なちゃらっぽこを振り蒔いてやることとしましょうよ。エェ北利さんのところへ行ってまいりましたが‥‥。」

抜麿「ムムさようかさようか、途中が寒かったろう、大儀であったナ。」

お狐「どうも夜分の事でございますものですからお寒うございましてネ、それに大きな洋犬(いぬ)がおりましたので怖うございました。」

抜麿「ウン、そうだろう、そうだろう。寒い晩である!なるほどあそこには大きな洋犬(いぬ)がいる。ハテ神妙不思議の事である!!よく分かったものである!!!なるほど天眼通である!神通である!ハッァ有り難いかたじけない、予は神通を得た!神通自在になった!安倍清明が式神を使ったというのも今思い当たったが、清明何するものぞやだ、もう羨ましくは無いぞ。して北利は何をしておったか、それを聞かせい。」

お狐「生憎北利さんはお留守でございました。」

抜麿「ナニ、北利は留守だったと?それは残念だった!何か別に見聞きした事は無いか、有るなら言って聞かせい。」

お狐「お女中が二人で北利さんのお噂をしておりました。」

抜麿「フム、何と申しておった?」

お狐「春の事だから大方待合いへでもいらしって、芸者でも揚げて遊んでおいでなのだろうと申しまして。」

抜麿「フム、そうか、他には何も申さなかったか。」

お狐「きっとまた芸者をお呼びなすったらそれに催眠術を掛けるなんて言っては嫌がられておいでだろうって。」

抜麿「フーム、もう他には何も申さんだったか?」

お狐「まだその他には、どうも旦那様の催眠術もいいけれども、余り心無しに長ったらしく掛けられると、後でがっかりしてくたびれてしまって、ご用の出来ないには弱る、と申しておりました。」

抜麿「ナァル程もっともである、これはそうであろう。貴様には後でたんと休息させてやるから賢い主人だと思え。さ、もう天眼通の実験も済んだから醒ましてやってもいいが、ン、まだ有ったまだ有った。暗示力の実験だ!いかほど施術者の命令が被術者の覚醒後にも行われるか試してみなければならん。この実験には少し条理に外れたような事をいいつけて見ねばどうも無意識でする事か記憶(おぼえ)が有ってする事かの判別が出来んから、よしよし少々出来かねるような突飛なことを申しつけて見てやろう。去年もこの暗示力の実験では大成功したのだが、お品を相手にさせたために大珍事が起こって、とうとうお智世に暇をやるに至ったが、今度は誰を相手にさせたもので有ろうか、我が家の中(うちうち)の者では、後でふんぬんが起こった時に困るし、まさかに往来の者にこれこれの事を仕掛けろと、おかしな事を命じておく訳にも行きかねるが、ハテ誰に仕掛けさせたものであろう、誰に仕掛けさせたものであろうか?ア、北利奇之助!彼に限る、彼に限る。彼は日頃催眠術についての自信が甚だしく強くって、自ら卓絶した術者だと思って予を軽く観ておる!いや内々では予を侮っておる!彼を実験の相手にしてやれば後で取り調べるにも何かに便利であるし。かつ少々はひどい事をしてやっても彼ならば構わん。彼の鼻を挫くにはむしろ少しは思い切った事を仕掛けてやる方がいい位である。ヤ、鼻を挫くと言えばお智世にお品を愚弄(なぶ)らせたのは実に巧く行ったものだった。しかし余り巧く行き過ぎたので事になってしまったが、奇之助は同じ催眠術研究者であって見れば暗示力実験の相手にしていささか愚弄したところで、お品のようにむやみに怒るまい。イヤ怒ればいよいよもって愚弄してやってもいい位である。すればまず相手は北利として、何をさせたものであろう?。ア、鼻を挫くというところから面白い事を思いついたぞ、少しひどいかも知れないが、構わん、実験だ。ウフフフフフフ、こりゃ堪えられない、あの北利めがどんな顔をするだろう、こりゃ可笑しくって可笑しくって独りで堪えられない!。これお狐、貴様にしかと言いつけて置くから命令(いいつけ)通りに致すのだぞ。」

お狐「ハイ。」

抜麿「明朝貴様が起きたら起き抜けにすぐに、」

お狐「起き抜けにすぐに、」

抜麿「まず顔を洗い、白粉をつけ、身仕舞いを致して、」

お狐「まず顔を洗い、白粉をつけ、身仕舞いを致して、」

抜麿「北利奇之助を訪ねて、面会を求めるのだ。彼は朝寝ゆえ寝ておるであろうが、如何様にしても起こして強いて面会をして、」

お狐「如何様にしても起こして強いて面会をして、」

抜麿「顔を見るや否や思い切った大きな声を揚げてナ、朽藁式催眠術の妙作用はこの通りと申して、」

お狐「朽藁式催眠術の妙作用はこの通りと申して、」

抜麿「手の中指薬指と親指とを寄せて他の指を伸ばしてナ、俗に申す狐々(コンコン)チキの形を両手ともにこしらえて踊り回るのだ。」

お狐「コンコンチキの形をこしらえて踊り回って、」

抜麿「奇之助を化かす心持ちで散々に嬲り立てた上、好い程を見てあれの鼻の端(さき)を突然(いきなり)にポーンと指で弾くのだ。」

お狐「好い機(しお)を見て突然(いきなり)に鼻の端(さき)をポーンと弾いて、」

抜麿「そしてトントントンと三歩後へ下がって眼を瞑って首を振りながら、」

お狐「三歩後へ下がって眼を瞑って首を振って、」

抜麿「フャラノ、フャラノ、フンと申して、ベッカッンコをして見せるのだ。」

お狐「フャラノ、フャラノ、フン、と申して、ベッカッンコをして見せるので。」

抜麿「そうだ、それでいいのだ。」

お狐「ハイ」

抜麿「しかと言いつけた通りにするのだぞ。」

お狐「ハイ」

抜麿「ではもう実験も沢山だ。予の新式は成功した。抜麿君万歳だ。さあ醒ましてやろう。この水を飲め、これを飲むとはっきりとしてすっかり常の心持ちになる。さあ一口飲め、そうだ、そうだ、それはっきりとしたろう。」

お狐「アァッ、アァアァ。オヤ、あくびばかり出てこりゃ怪しからないこと!マァ私はいつのか間に若様のお前でうっとりとしてしまったのでございましょう!ちっとも存じませんでしたよ。」

抜麿「ハハハそうで有ろう、何も知らんか?」

お狐「何にも存じませんが、何かおかしい事でもございまして?」

抜麿「ハハハ、いや別におかしい事も無かったが、お狐貴様はどどいつが上手だナ。」

お狐「あら嘘ばっかり。」

抜麿「嘘では無いぞ、さいのピンの所は狸ーのお尻なんぞという稀代な文句の歌を貴様は知っておるな。」

お狐「何でございますか知りませんが他人が歌っていましたのは存じております。」

抜麿「イヤ他人が歌ったのでは無い、貴様が歌ったのだ。」

お狐「あ、マア嘘を仰いませ!」

抜麿「虚言(うそ)では無い、ほんとに貴様が歌ったのだ。」

お狐「ほんとに?」

抜麿「ほんとにサ。」

お狐「マァどうしましょう、嫌でございますネェ。」

抜麿「コレコレそう恥ずかしがって慌てて行かんでもよい。ハハハハハハ、夢中になって逃げて行ってしまった。可憐な奴である!」

「術競べ」 | 2010/09/13(月) 18:36 | Trackback:(0) | Comments:(0)
「術競べ」(五) 作 幸田露伴
お狐「不景気で不景気で仕方なくって、ろくな仕事も無いから遊んでいるよりゃあましと、こんなところへ猫を被って奉公住みはしたものの、間がよかったら若様でも引っ掛けて強請(ねだ)る種子をこしらえて、暖まろうと思ったその甲斐も無く、学問に凝ってばかりいる無類の堅物なので、こりゃあお給金ぎりじゃあどうも始まらない、まだしも安請け合いでも稼いだ方が正月だけによかったか知らんと、内々はちっともう後悔していたところ、妙なことも有るもので、魔法に若様が凝っているとはホントに希代な話だが、いい物好きな馬鹿様をいい加減にあしらって、どうかしてちっとやそっとは巻き上げたいものだ。昔話にある楊子隠れじゃあ有るまいが、魔法だなんて馬鹿馬鹿しい、どんなことをするのだろう。ホントに身の楽な人は下らないことをしたものだ。だがまあ何でもいい、出たとこ勝負で、大抵にあやなして多少銭(なにがし)かにしてやらなくちゃあ。どれどれ一つ若様の魔法を拝見と出かけようかネエ。チェッ誰か見ていて私の芸風を褒めてくれないかしら。こう見えてもちょいとお高い役者のお狐さんのする仕草にゃあ、かなり好いところがあるつもりなのだから、見物の無いなぁちともったいない様な気がするよ。ホホホホホホ!」
「術競べ」 | 2010/09/13(月) 18:34 | Trackback:(0) | Comments:(0)
「術競べ」(四)  作 幸田露伴
お釜「それお召しだよ、お狐さん。今頃何もご用の有ろう筈は無いのだから、きっと魔法のご用に違い無いよ、魔法始めって言うんで。」

お狐「大変な事ネエ、私はどうしようか知らん。」

お釜「どうしようってったってとても仕方はありゃしないよ。石部さんのおじいさんをさえ捕まえてあの騒ぎをなさるのだもの!」

お狐「ほんとに困っちまうのネ、まるで魔法に掛けられちゃあ若殿様はヒヒみたいになっていらしゃるのネエ。」

お釜「お前さんもなかなかの口だこと!本当にヒヒなんだから叶やしないよ。いいサ、私の伝で百円とお言いよ。値で別れ話になるなあ商売(あきない)の常だって言うじゃあ無いか。」

お狐「ホホ魔法に使われ賃を百円なんていうのはヘンテコの商売ネエ。」

お釜「構やあしないよ。ホラまたお呼びになってるよ。」

お狐「仕方がない。お釜さんも一緒に行って下さいな。」

お釜「嫌な事だワネ。白羽の矢が立った人だけでお勤めなさい。それまたお呼びになるよ。」

お狐「あぁ切ない情け無い、心細くなってきた。魔法のご用だと思うと行く空は無いネ。」

お釜「水盃でもして別れようかネ。」

お狐「ひど!お前さんは人の事だものだからいい気になっているのネエ。ようござんす、思い切って行って来ますよ。」

「術競べ」 | 2010/09/13(月) 18:32 | Trackback:(0) | Comments:(0)
「術競べ」(三) 作 幸田露伴
抜麿「ハハハハハハ。金左衛門のジジイめ、大いに驚きおった様子だ。いかに予が催眠術に達しておるからとて、ビールビールスッポンというような呪文でどうもなるのでは無いが、自分の気でもって嫌な心持ちになったと見えて妙な顔をして逃げおった。これが真の当意即妙というので、メスメルでもリーボーでもこんな事は知るまい。ハハハハハハ。しかしこれもまた研究の一材料で、等閑にはできぬ事だ。確かに彼は恐怖して不快を覚えたに相違無い。あの目つき、あの声音、あの挙動というものは、彼が自己で自己に暗示した結果に他ならぬのである。まずもって研究記録の一ページは石部金左衛門で埋まる分けだ。それはそうとして去暮(くれ)はお智世を試験に供して、大分に色々の事を発明したが、年末年頭の俗事のために大いに実際研究を怠った。あの北利奇之助は定めし予を凌駕しようと思って勉強したことであろう。しかしあの男などに遅れを取る抜麿ではない、予は予で十分に研究を積んで驚かしてやろう。イヤそれについてはまた予が工夫した新式の催眠法を、差し当たりまず実験して見ねばならぬが、お品は物静かな生まれだけれども予の顔を見れば逃げるし、お釜は卑劣な奴で百円くれと言うし、前に掛けたことのある植木屋のせがれはその後は来ぬし、お鍋は愚な奴で、直に睡眠するそれはいいけれども、甚だしく涎を垂らして椅子も何もぬらぬらにして、そこら中をナメクジの這ったように致すには汚くて叶わぬ。ハテ誰を実験に使おうか、ムムお狐お狐!。来た時から彼女(あれ)は利口で健全で常識の発達しておる、実験用には屈強の女だと思っておった。彼女(あれ)の事、彼女(あれ)の事!どれ呼び出して今夜は術始めに一つ試みてやろう。」
「術競べ」 | 2010/09/13(月) 18:30 | Trackback:(0) | Comments:(0)
「術競べ」(二)  作 幸田露伴
石部金左衛門「だいぶ冷えますることでござりまするが、まだご書見でならせられまするか。」

若殿抜麿「おぉ金左衛門(きんざえもん)か、何か用事か。」

金左「イヤご書見中をお妨げ致しては相済みません。しかし夜に入ってまでのご勉学には金左衛門も、ことごとく感服つかまつります、当世一般とは申しながら、恐れ入った事でございまする。」

抜麿「何もそう感服してもらわんでもよい。学問というものは一体面白いものだからナ。」

金左「はッ。恐れながらその、学問を面白いものと仰せられるのが実にありがたいことでございまして、金左衛門いよいよもって一方ならず感服つかまつりまする。失礼ながらお読み差しになりおりまするのは何の書でございまして?」

抜麿「ム、これか。これは最新のヒプノチズムの書だナ。」

金左「ヘェエ。金左衛門西洋の言葉はいっこうに解りませぬが、ヒプノチ‥‥とか申しますると、何の意義(わけ)でございまするので?」

抜麿「そうさナ、まず一般に催眠術と訳しておるナ。」

金左「ヤ、催眠術の書をお読みになっていらせられましたので!」

抜麿「何も左様に仰山に驚くことは無いではないか。」

金左「はッ。ではござりまするが恐れながらそれならば申し上げなければ相成りませぬ。実はかく人静かなる折りを見てお目通り致しましたのも、その事につきまして申し上げたくてでございました。恐縮ながら一応お聞き取り下されまするように。」

抜麿「フフム。何と申す金左衛門。催眠術について言ってみたいことがあると申すのであるか。遠慮はない、申してみい、聞いて遣わす。」

金左「はッ。まことにありがたいことで。しからば申しまする。恐れながら催眠術とはキリシタンバテレンの邪法の類で、甚だもって怪しからん義と金左衛門愚考つかまつりまする。しかるに承り及びますれば御上におかせられましては、大金をもってドイツ帰りの術者よりご伝授を受けさせられたるの由にて、それより深くお心をその事に傾けさせられ、日夜に魔法のご修行をばお積みなさるるやのご様子、全くもってご本心より出でたることとは金左衛門は存じませぬ。日頃ご学問にお凝りなされたるあまり天魔に魅入られたまいて、かようの事をお好みに相成る義にも立ち至られたかと存じまする。」

抜麿「これ金左衛門何を申すのだ。催眠術というものは決して左様の分けのものでは無い。しかるべき理があってしかるところの心理的現象で、最も研究を値するところの深奥の道である。であるによって予もこれを研鑽しておるのだ。決して危険または有害の事では無いから予の自由に任せておけ。」

金左「いや、ご自由にお任せ申し上げる分けにはどうしても相成りません。あくまでご諫言を申し上げてお思い止まりになって頂きませねば、君ご幼少よりお付き申したる金左衛門、面目もござりませぬ。有害の事では無いと仰せられまするが、左道邪法をお学びになってはよろしいことはござりますまい。既にご承知でもございましょうが聖人のお言葉にも、異端を攻むるはこれ害なるのみとございますれば何卒なにとぞ速やかに魔法の書共をお焼き捨て相成りまして、ふたたびおん顧みこれなきようご断念遊ばされたく、金左衛門ひとえにこの義務用いを願い上げ奉りまする。今日も既に物陰にてお端共の申すを聞きますれば、今にもまた君の魔法の為のご用仰せつけらるるかと、殊のほかに恐怖も仕り、かつ迷惑も仕る様子、昨年末お端共の中にて喧嘩悶着致し、ついに一名お暇下さるるよう相成りたるも畢竟は由無きおん物好き故でござりますれば、左様の義にお心をお寄せ相成るはお家ご擾乱の元と存知奉りまする。今にして早くおん思い捨て相成らぬにおいては、後害計り難き義でございますれば、新年早々ではございまするが御面を冒してご諫言申し上げまする。何卒ぴったりと左様のおん物好きご廃止あらせらるるようご賢慮の程を願わしゅう存知たてまつりまする。」

抜麿「これやかましいわ金左衛門、制しても制しても予の声を耳にも入れず何を一人でしゃべっておる?貴様のような学術的趣味の解らぬ者には申し聞かすも難儀であるが、催眠術とは決して魔法でも無い左道でも無いから、安心致すがよい。」

金左「とばかり一口に仰せられましても。」

抜麿「不安に存ずると言うのだろうがそれは知らんからだ。何も薬を用いるでは無し、仕掛けを用いるでは無し、危険を起こすべきタネは何も無いのであるから、心配する角は更に無いでは無いか。」

金左「しかし御上におかせられまして印を結び呪文を唱えられますると、術をかけられましたるものは心神暗くなりまして、ついに眠気を催し我を忘れましたる挙げ句、御上の命ぜられますることは如何様の儀でも致しますると承りましたが、右は事実のことでござりましょうかいかがで。」

抜麿「ヤ、それはもうその通り、奇々妙々である。白湯を与えて酒だと申せば飲んで酔いを発する、灰を与えて砂糖だと申せば舐めて甘いと申す。実にそれは神変不可思議のものである。金左衛門その方に法を施して遣わそうか。」

金左「どういたしまして、まっぴら御免下さいますように。」

抜麿「イヤ、よいわ、掛けてやろう、さあ掛けて遣わそう。そうすると貴様も催眠術を魔法だなぞと申すそんな頑迷の事を申して意見立てを致すような下らぬ事は皆忘れてしまう。さ、掛けて遣わそう、もちっと進め。」

金左「と、と、とんでも無い事でござりまする、怪しからん事で。」

抜麿「イヤ、掛けてやろう、掛けてやろう、それがよい金左衛門。別に苦しいことでも無し、何ともなくってそれでその方の望むことを遂げ得させる。天に上りたくば天に上らせてやる、空を飛びたくば飛ばせてやる。」

金左「ウーン。」

抜麿「何だ、その様な恐ろしいうなり声を出して。」

金左「ヤ、どうも怪しからんことを仰せられまする。いよいよもって魔道ご執心の余り、いささかご逆上の気味と相見えまする。天に上らせ空を飛ばすなどと、左様の事が何として出来ましょう。」

抜麿「イヤ、論より証拠だ、出来るから奇妙である。さあ貴様に掛けて催眠術の奇特を眼前に示してやろう。」

金左「どう仕りまして、怪しからん事で、実に怪しからんことで。いよいよもって催眠術は魔道に疑いござらん。正法に奇特無しと申す言葉の裏を参る事でござれば、その奇特の有ると仰せらるるだけに合点がまいりませぬ。金左衛門どうあってもお止め申さねばなりませぬ。」

抜麿「エェくどくどと申してうるさいジジイである。‥‥よしよし、嚇してやろう。」

金左「イヤ何となされまする?その様にランプを暗くなされまして!」

抜麿「……‥」

金左「その様なお真面目な恐ろしいお顔をなされまして金左衛門をお睨みになりまして。もしやこれは魔術をお掛けに相成るのではございませんか、不気味でござりまする!」

抜麿「もとよりである。もう二三分通りは掛かっておるぞ金左衛門。」

金左「ヒャア、これは怪しからん、襟元がぞくぞく致しまする!南無八幡大菩薩、摩利支天神!」

抜麿「それいよいよ掛かって来たぞ、どうだ金左衛門!。ビールビールスッポン、アアワーブクブク、ノーンダラヨカラウ、ウマカラウソハカ、ゴクリゴクリゴクリ。」

金左「これはたまらん、異な心持ちになって参った。魔術を掛けられては金左衛門一生の瑕瑾になる、逃げるに越した事は無い!」

抜麿「これ何処へ参る?金左衛門、逃げてはならんぞ。」

金左「摩利支尊天、摩利支尊天。」

抜麿「待て待て金左、掛けて遣わすぞ金左。ビールビールスッポン。‥‥」

金左「摩利支尊天、摩利支尊天。」

抜麿「待て待て金左。アアワーブクブク、ノーンダラヨカラウ。」

金左「摩利支尊天摩利支尊天」

抜麿「ビールビールスッポン。」

金左「摩利支尊天摩利支尊天」

抜麿「ビールビールスッポン。」

「術競べ」 | 2010/09/13(月) 11:35 | Trackback:(0) | Comments:(0)
「術競べ」(一)  作 幸田露伴
昔、現代語にして読みやすくしたものですが、昔のホームページがつぶれるのでアップします


お釜「そりゃあもう別に勤めづらいというような事は無いお屋敷だけれどネ…‥、」

お狐「『だけれどネ』ってお言いだと、何かあるの?やっぱり何かしら嫌な事でもあるの?」

お釜「お前さんは参上(あが)ってから半月ばかりにしかならないし、それにちょうど暮れからお正月へかかったところだからお上でもお忙しいものなのでネ、まだ何にも知らずにおいでだが今にご覧なさい‥‥。」

お狐「おやおかしいのネ、ご用の多い時にさえ嫌な事の無い勤めやすいお屋敷でもって、ご用の空きになるとかえって嫌な事が有るって言うの?一体どんなことなの?教えておいておくんなさいナ。エ、エ、若様が何か猥褻(いや)らしいことでもなさるの?」

お釜「いいえそうじゃあ無いんだけれど‥‥。じゃあお前さんは本当に何にも知らずに上がったのだネ。」

お狐「気になる事ネェ、そんな事を言われると。私も初奉公という年齢(とし)じゃあ無いけれどもネ、全く今までお屋敷奉公なんて言うものはした事が無いんだから、ただでさえ何だか妙に心細く思ってるのだよ。だけども暮れにこちらへ上がってから、別に嫌だと思った事もついぞ無いんでネ、内々いいお屋敷へ勤め当てたと喜んでいたところだが、じゃあやっぱり何かつらい事があるの?あぁ解った、奥のお取り締まりのあのお熊さんていう太ったお婆さんネ。あの人が岩藤みたいに底意地でも悪くって?」

お釜「ナァニあの方は見かけは恐ろしくっても心はいい方なんだよ。お前さんの前にいたお智世(ちせ)さんていう人がネ、あの方にあだ名をつけて『雷おこし』と言ったワネ、古風(むかし)もので堅いだけで毒も何にも無いってんで。ハハハハハ。」

お狐「オホホホホホ。」

お釜「あの方よりは大殿様付きのお小間使いのお品さんネ、あの人の方がいくら付き合いにくいかしれやしないワネ。やっぱりお智世さんがくっつけた名だけれど『ゴムドロップ』たぁホントによく付いているよ。」

お狐「ヘェー、何故ネェ?」

お釜「変にクネクネして噛み切れない様子がまるであの人そっくりだもの!あの人ったら言葉遣いは柔らかで人当たりは好いけれども、お腹の中はネチネチして気難しい、煮え切らない、恨みっぽいような怒りっぽいような、そりゃあキザぁな人だからネ。」

お狐「オォ怖い人ネェ。あの人が意地悪するの?」

お釜「ナァニ別にあの人だってこっちからさえ構わずに置きゃあネ、ご用の無い時は新体詩とかいう物を黙々読んでいて一人で高慢ぶってるだけの人だよ。」

お狐「解らないのネ。じゃあ何が嫌な事なの?」

お釜「そんなにお聞きだから知らせてあげようがネ、その嫌な事って言うのはお前さんのお付き申している若様がネ。」

お狐「ハァ。」

お釜「あのお優しい、お人の好い、抜麿(ぬけまろ)様がネ。」

お狐「やっぱり性の悪いお癖でもお有りなさると言うの?」

お釜「いいえ女なんぞお構いなさるようなそんな方じゃ無いけれども。」

お狐「焦らさずと早く言って下さいな、じれったいワ、お釜(かま)さん。」

お釜「あれであの若殿様が大の魔法使いでネ。」

お狐「エェッ。何ですって?」

お釜「大の魔法使いでいらっしゃるものだからネ、今にきっとお前さんはその魔法のご用をお言いつかるだろうが、魔法のお修行のご用を言いつかるのは誰だって嫌だろう、じゃあ無いか?」

お狐「魔法って、あの自雷也やなんかの?嫌だよお釜さんは人をからかってさ、馬鹿馬鹿しい、そんな事があってたまるものかネ。」

お釜「イイエ、それが有るんだから仕方が無いじゃないか、今に解るよ。」

お狐「何だかおかしいことをお言いだけれど本当の事なの?。」

お釜「嘘をついたってしょうがありゃしないワネ。本当の事だよ。」

お狐「あら!それじゃあいよいよ本当に本当なの?。」

お釜「ハハハ、そうさ。本当に本当さ。本当にも何も!誰だって知っている事だよ。現にお前さんの前にいたお智世さんという人もネ、魔法のいきさつから起こった事でお暇を頂いたくらいの訳さ。」

お狐「ヘェー。どういう訳合いでネ?」

お釜「何だネェお前さんは、私の方へすり寄って来てサ。あの、若様がある夜お智世さんに向かって法をお使いなさるとネ、お智世さんはもうまるで夢中になってしまって、座れとおっしゃれば座り、起てとおっしゃれば立つのさ。」

お狐「ヘェー。若様はそんなに魔法がお出来になるの?何だか少しばかり不気味だことネ。」

お釜「そりゃあもう大変に高い金銭(おあし)をお出しになってお習いになったのだから、なさりゃあどんな素晴らしいことでも何でも造作なく出来るのだそうだよ。それでネ、お智世に向かっておっしゃったには、明日お前が一番はじめにお品に顔を合わせた時、『お品さんお前の高慢は止してくださいな、あんまり高慢な顔をしていると、それそれそれ、鼻の頭が伸びて伸びて垂れ下がって象のようになります、オホホホホホホ。」と笑ってやるがよい。と、こう繰り返し繰り返し御命令(おいいつけ)になったのだよ。するとお智世さんとお品さんとは前から仲が悪かったのだから、知っててお智世さんがそう言ったのだか魔法の効き目のせいだったか、次の日の朝大殿様の方と若殿様のお部屋との間の、あのお庭に沿ってあるお廊下でもってネ、お品さんが例の高慢な澄ましきった顔つきで、お智世さんを見かけて慇懃に挨拶すると、お智世さんはおはようとも言わなけりゃあ頭を下げようでも無くっていきなり甲走った黄色い声をむやみに張り上げてネ、『お品さんお前の高慢は止してくださいな、あんまり高慢な顔をしていると、それそれそれ、鼻の頭が伸びて伸びて垂れ下がって象のようになります、オホホホホホホ。」とご殿中響いて聞こえるほどに笑ったのサ。」

お狐「マァー。ひどい事。怒りましたろうネ。」

お釜「怒るまい事か、怒るまい事か。日頃高慢な憎らしい人で、おまけに鷲のくちばしのような格好をしている自分の鼻つきを大自慢でいる人だから、皆がお智世さんの言葉を聞いてクックと笑うのが聞こえると、サァ真っ青になってプイと怒って大殿様のお部屋へ駆け込んだが、それからは何を申し上げたか泣き声が低く聞こえたばっかりサ。で、その晩お智世さんはお暇が出るということになってしまったので、その代わりにお前さんが来たというような訳になったのだよ。」

お狐「お智世さんていう人は馬鹿を見ましたのネェ、かわいそうじゃ有りませんか。」

お釜「だから若様から内々で大紙幣(おさつ)を一二枚頂いて下がったワネ。」

お狐「まったく魔法を使われると前後の考えが無くなるのでしょうかネェ?」

お釜「私はどうだか知らないけれどもネ、今にお狐(おきつ)ちょっと来いってんできっとお呼びになるだろうから、どんなものだかその時になったら自然(ひとりで)にお解りだろう。」

お狐「嫌な事ネェ、そりゃあ大変だわ。オォ嫌な事、オォ嫌だ事!魔法のお手習いのお草紙になんかされちゃあたまる事ちゃあ無いッ。」

お釜「ほんとにサ。だから私は、お釜ちょっと来いとおっしゃった時にネ、私は魔法のお相手になるお約束でご奉公は致しませんから嫌でございます、それともたってご用になさりたけりゃあ、一遍について百円づつ前金に頂きとうございますって言って、ようやくの事に人身御供を免(のが)れたよ。」

お狐「ホホホホホホ、お前さんはなかなかどうして大変に強いのネエ。」

お釜「どうしてどうしてお前その位にしなくっちゃあ、悪くしようものなら魔法責めにされちまうよ。抜麿様ばかりじゃない、抜麿様の学校のお友達にも、北利奇之助(きたりきのすけ)さんという金持ちの息子さんがあってネ、その人も大変な魔法凝りだそうで、何でも若様とその人と一緒になった日にゃあ大変な騒ぎだよ、誰でも彼でも捕まえて魔法を使いたがるのだからネ。」

お狐「大変なヘンテコな人もあればあるものですネェ。写真に凝った人よりゃあどうも始末が悪いこと!どうしよう、私は急にお暇を願おうかしら。」

お釜「悪い事は言わないから私の伝がいいよ、まさか百円は下さる気遣いが無いからネ。」

お狐「そうネェ。」

お釜「今夜あたりはお正月でももう七草過ぎで、一体に物静かだから魔法初めなんて言うので、お前さんちょっと来いのお召喚(よびだし)をいただくかもしれないよ。」

お狐「嫌ですよお釜さん、不気味だことネェ。」

「術競べ」 | 2010/09/13(月) 11:33 | Trackback:(0) | Comments:(0)
肩こり
 肩こりを100%暗示の影響とか言っているアホな催眠術師がいるみたい。
 暗示の影響で肩こりが酷くなることは当然ありますが、全部が全部心因性って訳ではありません。
 長時間同じ姿勢をとり続けたり、使い続けたりすれば筋肉が疲労して、筋肉が硬くなってくるのは当たり前ですし、
内臓体性反射といって内臓の病変がシグナルとして肩こりを引き起こしている場合もある。
この手のコリを、催眠だけでとれる(ごまかせる)のはせいぜい数時間ぐらいでしょうね。
 よく説明で言われる凝らない人と凝っている人がいるというのも微妙なところで、本当に健康で凝らない人もいますが、多くはただただ神経が鈍感なだけでしっかり筋肉が硬くなっている人も多いです。後者の場合、内臓の病変を見逃すことも多く、突然あの人健康そうだったのに・・・ってことになることも多いです。
 確かに心と肉体は密接な関係がありますので、心を軽くすれば障害が解消される場合も多いですが、心は肉体に縛られている以上、肉体をおろそかにして心ばかりに目を向けていては、催眠ばかり覚えて自分のファッションに気を遣わない不潔なおっさんと一緒で、解決できるものも解決しないですね。

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魔術書 | 2010/04/24(土) 15:45 | Trackback:(0) | Comments:(0)
ハムストリング
スペリオールで連載していたフットボールネーションで、もも裏を使う歩き方をすることでダイエットと老化防止になり階段も楽に上れるようになる。ということをやっていました。
もも裏を使う歩き方とはお尻のすぐ下辺りを意識して歩くだけで良いそうです。
また脚を上げるのは股関節から下ではなくへそから下、つまり大腰筋を使えって内容でした。
これを別の言い方、東洋医学で言うと丹田を使えになりますね。

この二つつまりハムストリングと丹田を意識しながら歩いていると、かなり身体が軽く脂肪も燃焼されているって感じがしました。
ベッドに入り、ふと考えてすごいことに気がつきました。
これセックスの時の腰フリもかなり楽に出来ますね。
腰振るのがしんどいと思っていた人は、ハムストリングと丹田に力を入れる感じを意識しながら腰振ってみてください倍以上持続して腰が振れますよ。

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マンガ喫茶「マグロ」 | 2010/04/05(月) 17:48 | Trackback:(0) | Comments:(0)
生死感について
基本的に死ぬときに笑顔で死ねたら本望でしょうね。
ボクはオカルトが大好きです。
以前は1999年に死んでしまう前提で行動してまして、1999年7月までにやれることは全部してしまいました。(結婚以外w)
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おかげで2000年以降燃え尽き症候群です(笑)
で、最近の映画では2012年にまた死んでしまうらしいのでw、
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死ぬときに後悔したくないので新たな道へ進むことに決め学校に行くことにしました。2012年で死ぬと学生の身分で死ねそうです(笑)
また、ボクの寿命を勝手に予想すると45歳あたりで事故死しそうなのでw、残りの人生を考えても今の仕事で10年生き抜くにはちょっと厳しいので貧すれば鈍する前に学校に行くことにしたというのもあります。
こうやって書くとかなりいっちゃってる理由ですね。

基本的に漠然とした死を見据えて生きてるんですよね。タイムリミットというか、それがモチベーションにもなっている。死ぬときに精神的に苦しい状態で死ぬなんて嫌だから。
基本的に脳みそは生きている間しか動きません。怨み呪い不幸を抱えてもし死んだとしたら時間はそこでストップです。死後の世界があるとして永遠に怨み呪い不幸の苦しみから抜け出せません。逆に言えばどんなに酷い人生でも最後に笑って良い人生だったと思えたなら永遠にハッピーでしょう。
それには反省はしても良いですが、後悔はしないことです。反省とは文字を分解すれば分かりますが少な目にふり反ることです。前にも書きましたが人間万事塞翁が馬。その時の決断があなたにとって最善の決断だったんです。もしうまくいってないと思ったならそこで新しい決断をするだけです。
トンネルはいつか抜けて晴れやかな世界がやってきます。ただ、墓穴の場合もあります。
トンネルと墓穴の違いは、トンネルは焦りは増えるかもしれませんが、苦しさつらさはそんなに変わりません。墓穴は最初は気がつかないくらいで、徐々にじわじわと苦しくつらくなっていくものです。続ける意思が必要なのがトンネル(途中で諦めてしまうと墓穴に変わります)、切り替える決断が必要なのが墓穴でしょう。
あと、思いに凝り固まらないことですね、必ずしもそうではないんじゃないか?という疑問を常に心の片隅に持っておくことも大事だと思います。
ボクは「いいかげん」とか「てきとー」って言葉が好きなんですが漢字で書くと「良い加減」「適当」です。0か1のデジタル思考では突き詰めていくと一番難しいんですよ。つらく感じたら0か1のデジタル思考、合理主義的考えに凝り固まってないか客観的に見る必要があるかもしれませんね。0.3の道や0.7の道があるかもしれません。
また、他人は自分が思っているよりも自分のことに関心がありません。他人とのしがらみによってがんじがらめにならないことも大事ですね。

最後にボクが好きなマジシャンの本を紹介して終わります。考え方はちょっとネガティブすぎるところもありますが良い本だと思います。
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魔術書 | 2010/02/17(水) 13:32 | Trackback:(0) | Comments:(0)
カルマ(業)について
久々の更新です。
今回のテーマはカルマについてです。
因果応報ってやつですね。善業を行えば善業が帰ってきて悪業を行えば悪業が帰ってくるという考え方です。
一見正しそうに思えますが、これには過去を引きずってしまう可能性があるという落とし穴があります。
私が不幸なのは過去のあの出来事があったせいだ。と考えてしまうといつまでも先へ進めなくなります。
また、これが一人生だけで済めばいいですが、輪廻転生と絡んでくると私の人生が不幸なのは前世の因縁だ。となってなにをやっても過去に決まっていたことになってしまいます。過去の奴隷です。そんなんで人生楽しめるんでしょうか?
時は未来から現在、過去へと流れていくものです。過去から現在、未来へ行くものではありません。人間万事塞翁が馬と申しまして、もし現在の出来事が不幸だと感じても未来ではそれが幸福へつながるきっかけになっているかもしれません。今選んだ決断が過去を作るんです。ですから現在不幸だと感じるのであれば、その不幸を業として受け入れ浸っているのではなく(浸っている間はいつまでも不幸です)、幸福になる選択を今すべきです。

では、なぜカルマという考えがあるのか?
例えば、生まれつき手足がない子が生まれてきたとすると、親としてはやり場がなかったりします。また病気や事故で
半身不随になってしまったとすると、なぜこんな目にと考えてしまうのが人間です。そこでカルマという概念があると少し心が軽くなるからです。
同じ事が輪廻転生にも言えます。最愛の人が病死した事故死した時、死後の世界や生まれ変わって新しい人生があるんだと思わなければ精神を病んでしまうかもしれません。
そういう理由から生まれてきた概念でしょう。

死後の世界を思う人が何人もいれば実際バーチャル(脳内)の世界ではそういう空間(ある種の非言語暗示の固まり)が出来ていくでしょう。これが霊界かなと思います。
カルマでいうならば、善業をつめば、何か良いことがありそうって気になり実際良いことをフィルタリングして見つけようとしますから良いことが起こったと思いやすくなります。悪業をつめば良心がある場合はそれに苦しめられ悪いことがフィルタリングされて起きやすくなります。また自分に良心の呵責がなくても多くの人に恨まれればそういう空間(非言語暗示の固まり)ができますから何かの拍子でそれに触れたら自分の精神や自分の周りの人の精神にも影響は避けられないので悪いことが起きてくると思われます。カルマや輪廻転生が本当にあるなしにかかわらず、できるだけ良いことをした方がよさそうですね。

これはガルマ(笑)
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魔術書 | 2009/12/15(火) 11:10 | Trackback:(0) | Comments:(0)
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